「居住支援協議会設置についての要請書」に対する東京都の回答
「都の居住支援協議会の設置及び民間賃貸住宅施策についての要請書」に対する
東京都(都市整備局)の回答(6月20日付)について
2014年6月27日 住まい連、住まいの貧困ネット
5月20日に標記の要請書を国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)、住まいの貧困に取り組むネットワーク、東京住宅運動連絡会の3団体で提出、その回答が6月20日示されました(文書回答)。
その後、都側とやりとりし、下記のようにまとめました。上段が要請内容、下段が都の回答、末尾にコメントを付しています。
残念ながら非常に不充分な回答になっていますが、引き続き対策の強化を求めていきたいと思います。
1.東京都設置の居住支援協議会について
「住宅セーフティネット法」は「低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者」に対する「賃貸住宅の供給の促進を図り、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進に寄与する」としています。この目的のもと、第10条で「居住支援協議会」(以下協議会)を定めています。検討されている都の協議会を真に実効性あるものとするために、以下の事項の実現を求めます。
(1)協議会の構成員について
協議会は地方公共団体、宅建業者、賃貸管理業者と共に、「住宅確保要配慮者に対し居住に係る支援を行う団体、民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に資する活動を行う者」を構成員としています。都の協議会には、これらの支援を行う団体、活動を行う者として以下を構成員とすることを強く希望いたします。 ①東京借地借家人組合連合会、②NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、③NPO法人住生活改善・住宅耐震支援センター、④小規模家主の会、⑤住まいの貧困に取り組むネットワーク、
(2)協議会の活動について
「協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める」とされています。都の協議会の活動、運営について以下の事項の実施をご検討頂きたいと思います。①低額所得者向け民間賃貸住宅の供給戸数の量と質の確保及び拡充、円滑な入居促進のための実効ある活動の実施、②「民間賃貸住宅への円滑な入居」のための入居初期費用の無利子貸出しを行うこと、③協議会が民間賃貸住宅入居の保証人の役割を果たすこと。
【回答】
(1)協議会の構成員について
都では、これまで、都民の居住安定確保のために、関係団体とともに、東京都すまいサポート連絡協議会を設立した情報共有などを行ってきました。
都の居住支援協議会については、この連絡協議会の活動を発展させて設立するものであり、まずは、これまでの連絡協議会の構成員を中心に設立することを想定しており、相談しています。
(2)協議会の活動について
都の協議会は、市区町村の協議会の設立促進及び活動支援を行うために設立するものです。
都の協議会では、市区町村や関係団体に対して説明会等を実施し、協議会の設立を働きかけていくこととしており、その際、区市町村協議会の役割や様々な活動事例などを示したパンフレットを作成し、活用していきます。
2.市区町村の居住支援協議会について
貴職は、「それぞれの地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、区市町村が居住支援協議会を設置して、主体的に取り組むことが重要」、「都が、広域自治体の立場として、自ら居住支援協議会を設置することは、基礎的自治体である市区町村による居住支援協議会の設置促進と活動支援を行う上で効果的であり」と表明しています。
これは極めて重要な姿勢であり、積極的に評価するものです。特に東京23区での協議会設置が急がれています。東京都としてどのように支援、指導を行い、進めようとしているのか、具体的な計画を明らかにして下さい。また、市区町村の協議会についても、上記の協議会の構成員、協議会の活動が実施されるよう、指導や要請を行って下さい。
【回答】
都の協議会では、市区町村や関係団体に対して説明会等を実施し、協議会の設立を働きかけていくこととしており、その際、区市町村の協議会の役割や様々な活動事例などを示したパンフレットを作成し、活用していきます。
また、区市町村の協議会の構成員や活動内容については、住宅の確保に配慮が必要な方々に対し、それぞれの地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うため、それぞれの区市町村において主体的に検討すべきことと考えます。
3.当面する民間賃貸住宅施策について
(1)民間賃貸住宅の空家の利活用と対策について
東京都では46万5千戸の賃貸住宅の空家が存在(平成20年調査)しています。こうした主に民間賃貸住宅の空家の利活用と必要な対策のために、東京都として条例制定等の独自対策をとることを求めます。この中で、民間賃貸住宅を活用した借上げ公営住宅や適正なシェアハウスを供給し、単身者の居住の確保、安定を図ることを要望します。
【回答】
都は、空き家の利活用方策の可能性を検証するため、空き家活用モデル事業を実施しています。今後、モデル事業の成果の検証に加え、区市町村や他県での取組、学識経験者、関係団体等の意見も参考にし、その方策を検討していきます。
(2)民間賃貸住宅への家賃補助制度の導入について
都営住宅への応募者は毎年20万世帯にのぼり、全国一の約30倍の高倍率となっています。応募しても都営住宅に入居できず、民間賃貸住宅に居住する世帯に対する家賃補助制度を早急に導入することを要求します。また、「脱法ハウス」(違法貸しルーム)等に入居する低額所得者が民間賃貸住宅に転居した場合の家賃補助の実施を求めます。
【回答】
家賃補助については、生活保護制度との関係、財政負担のあり方等、多くの課題があることから、都として実施することは考えていません。
なお、違法貸しルームからの転居にあたって支援が必要な方については、それぞれの事情に応じた施策により対応できるものと考えています。
(3)民間賃貸住宅の耐震化と居住水準・環境の改善について
首都直下型地震等に備えるため、大きく立ち遅れている民間賃貸住宅の耐震化の支援、補助を早急に実施して下さい。また、民間賃貸住宅の居住水準、居住環境の改善のための施策を検討し、必要な支援、補助を求めます。これらの耐震化や居住改善は、家賃値上げを伴わず、従前居住者が住み続けられるよう、規制などを行うようにして下さい。
【回答】
豊かな住生活は、人々のニーズが反映される市場において、自助努力によって実現されることを基本とすべきであると考えます。
その上で、都では、これまでも、住宅リフォームに関する情報提供等のほか、空き家モデル事業の実施など、市場が円滑かつ適切に機能するよう誘導・補完することを通じて、住生活の向上や質の高い住宅ストックの形成を図ってきているところです。
以上
【東京都(都市整備局)の回答について(コメント) 住まい連代表幹事 坂庭国晴】
① 都設置の居住支援協議会は、「東京都すまいサポート連絡協議会の構成員を中心に設立する」としています。この協議会は平成24年5月に設置された「行政、公的賃貸住宅事業者、不動産関係団体などで構成」したものです。この枠組みでは要請団体は除かれることになり、市区町村協議会の構成メンバーに入ることを含め、今後共追求していく必要があります。
② 都の協議会の活動は、「区市町村の協議会の設立促進及び活動支援を行う」と回答しています。都としての主体的、積極的活動の意志が見られず、「パンフレットを作成し、活用していく」程度にとどまっています。都として、区市町村の協議会に対し、国の助成金と合わせた補助制度などの創設や要請書にある①~③の具体的活動を引き続き求めていくことが大事です。
③ 「区市町村の協議会の構成員や活動は、それぞれの区市町村において主体的に検討すべき」との回答です。都自らが余り主体的でないのに、このような回答は首をかしげますが、「地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うため」としていますので、各区での取り組みが重要です。
④ 民間賃貸住宅の空き家については、「モデル事業の実施と検証、方策の検討」としています。都独自の条例制定による対応の強化、借上げ公営、シェアハウスの供給などは回答せず、極めて不十分なものです。
⑤ 一定程度の「家賃補助制度の導入」は「生活保護制度との関係」などを持ち出し、拒否しています。この問題と「脱法ハウス」からの転居の支援については、これからの重要課題です。
⑥ 居住改善などの回答は一般的でかつ「自助努力」をあえて持ち出すことは許されません。
東京都(都市整備局)の回答(6月20日付)について
2014年6月27日 住まい連、住まいの貧困ネット
5月20日に標記の要請書を国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)、住まいの貧困に取り組むネットワーク、東京住宅運動連絡会の3団体で提出、その回答が6月20日示されました(文書回答)。
その後、都側とやりとりし、下記のようにまとめました。上段が要請内容、下段が都の回答、末尾にコメントを付しています。
残念ながら非常に不充分な回答になっていますが、引き続き対策の強化を求めていきたいと思います。
1.東京都設置の居住支援協議会について
「住宅セーフティネット法」は「低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者」に対する「賃貸住宅の供給の促進を図り、もって国民生活の安定向上と社会福祉の増進に寄与する」としています。この目的のもと、第10条で「居住支援協議会」(以下協議会)を定めています。検討されている都の協議会を真に実効性あるものとするために、以下の事項の実現を求めます。
(1)協議会の構成員について
協議会は地方公共団体、宅建業者、賃貸管理業者と共に、「住宅確保要配慮者に対し居住に係る支援を行う団体、民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に資する活動を行う者」を構成員としています。都の協議会には、これらの支援を行う団体、活動を行う者として以下を構成員とすることを強く希望いたします。 ①東京借地借家人組合連合会、②NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、③NPO法人住生活改善・住宅耐震支援センター、④小規模家主の会、⑤住まいの貧困に取り組むネットワーク、
(2)協議会の活動について
「協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める」とされています。都の協議会の活動、運営について以下の事項の実施をご検討頂きたいと思います。①低額所得者向け民間賃貸住宅の供給戸数の量と質の確保及び拡充、円滑な入居促進のための実効ある活動の実施、②「民間賃貸住宅への円滑な入居」のための入居初期費用の無利子貸出しを行うこと、③協議会が民間賃貸住宅入居の保証人の役割を果たすこと。
【回答】
(1)協議会の構成員について
都では、これまで、都民の居住安定確保のために、関係団体とともに、東京都すまいサポート連絡協議会を設立した情報共有などを行ってきました。
都の居住支援協議会については、この連絡協議会の活動を発展させて設立するものであり、まずは、これまでの連絡協議会の構成員を中心に設立することを想定しており、相談しています。
(2)協議会の活動について
都の協議会は、市区町村の協議会の設立促進及び活動支援を行うために設立するものです。
都の協議会では、市区町村や関係団体に対して説明会等を実施し、協議会の設立を働きかけていくこととしており、その際、区市町村協議会の役割や様々な活動事例などを示したパンフレットを作成し、活用していきます。
2.市区町村の居住支援協議会について
貴職は、「それぞれの地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うためには、区市町村が居住支援協議会を設置して、主体的に取り組むことが重要」、「都が、広域自治体の立場として、自ら居住支援協議会を設置することは、基礎的自治体である市区町村による居住支援協議会の設置促進と活動支援を行う上で効果的であり」と表明しています。
これは極めて重要な姿勢であり、積極的に評価するものです。特に東京23区での協議会設置が急がれています。東京都としてどのように支援、指導を行い、進めようとしているのか、具体的な計画を明らかにして下さい。また、市区町村の協議会についても、上記の協議会の構成員、協議会の活動が実施されるよう、指導や要請を行って下さい。
【回答】
都の協議会では、市区町村や関係団体に対して説明会等を実施し、協議会の設立を働きかけていくこととしており、その際、区市町村の協議会の役割や様々な活動事例などを示したパンフレットを作成し、活用していきます。
また、区市町村の協議会の構成員や活動内容については、住宅の確保に配慮が必要な方々に対し、それぞれの地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うため、それぞれの区市町村において主体的に検討すべきことと考えます。
3.当面する民間賃貸住宅施策について
(1)民間賃貸住宅の空家の利活用と対策について
東京都では46万5千戸の賃貸住宅の空家が存在(平成20年調査)しています。こうした主に民間賃貸住宅の空家の利活用と必要な対策のために、東京都として条例制定等の独自対策をとることを求めます。この中で、民間賃貸住宅を活用した借上げ公営住宅や適正なシェアハウスを供給し、単身者の居住の確保、安定を図ることを要望します。
【回答】
都は、空き家の利活用方策の可能性を検証するため、空き家活用モデル事業を実施しています。今後、モデル事業の成果の検証に加え、区市町村や他県での取組、学識経験者、関係団体等の意見も参考にし、その方策を検討していきます。
(2)民間賃貸住宅への家賃補助制度の導入について
都営住宅への応募者は毎年20万世帯にのぼり、全国一の約30倍の高倍率となっています。応募しても都営住宅に入居できず、民間賃貸住宅に居住する世帯に対する家賃補助制度を早急に導入することを要求します。また、「脱法ハウス」(違法貸しルーム)等に入居する低額所得者が民間賃貸住宅に転居した場合の家賃補助の実施を求めます。
【回答】
家賃補助については、生活保護制度との関係、財政負担のあり方等、多くの課題があることから、都として実施することは考えていません。
なお、違法貸しルームからの転居にあたって支援が必要な方については、それぞれの事情に応じた施策により対応できるものと考えています。
(3)民間賃貸住宅の耐震化と居住水準・環境の改善について
首都直下型地震等に備えるため、大きく立ち遅れている民間賃貸住宅の耐震化の支援、補助を早急に実施して下さい。また、民間賃貸住宅の居住水準、居住環境の改善のための施策を検討し、必要な支援、補助を求めます。これらの耐震化や居住改善は、家賃値上げを伴わず、従前居住者が住み続けられるよう、規制などを行うようにして下さい。
【回答】
豊かな住生活は、人々のニーズが反映される市場において、自助努力によって実現されることを基本とすべきであると考えます。
その上で、都では、これまでも、住宅リフォームに関する情報提供等のほか、空き家モデル事業の実施など、市場が円滑かつ適切に機能するよう誘導・補完することを通じて、住生活の向上や質の高い住宅ストックの形成を図ってきているところです。
以上
【東京都(都市整備局)の回答について(コメント) 住まい連代表幹事 坂庭国晴】
① 都設置の居住支援協議会は、「東京都すまいサポート連絡協議会の構成員を中心に設立する」としています。この協議会は平成24年5月に設置された「行政、公的賃貸住宅事業者、不動産関係団体などで構成」したものです。この枠組みでは要請団体は除かれることになり、市区町村協議会の構成メンバーに入ることを含め、今後共追求していく必要があります。
② 都の協議会の活動は、「区市町村の協議会の設立促進及び活動支援を行う」と回答しています。都としての主体的、積極的活動の意志が見られず、「パンフレットを作成し、活用していく」程度にとどまっています。都として、区市町村の協議会に対し、国の助成金と合わせた補助制度などの創設や要請書にある①~③の具体的活動を引き続き求めていくことが大事です。
③ 「区市町村の協議会の構成員や活動は、それぞれの区市町村において主体的に検討すべき」との回答です。都自らが余り主体的でないのに、このような回答は首をかしげますが、「地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うため」としていますので、各区での取り組みが重要です。
④ 民間賃貸住宅の空き家については、「モデル事業の実施と検証、方策の検討」としています。都独自の条例制定による対応の強化、借上げ公営、シェアハウスの供給などは回答せず、極めて不十分なものです。
⑤ 一定程度の「家賃補助制度の導入」は「生活保護制度との関係」などを持ち出し、拒否しています。この問題と「脱法ハウス」からの転居の支援については、これからの重要課題です。
⑥ 居住改善などの回答は一般的でかつ「自助努力」をあえて持ち出すことは許されません。
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