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全国追い出し屋対策会議・生活弱者の住み続ける権利対策会議の要請書


10月26日、住宅問題に取り組む法律家らでつくる「全国追い出し屋対策会議」と「生活弱者の住み続ける権利対策会議」の2団体が国土交通省に提出した要請書を以下に掲載します。

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2016年10月26日

国土交通省住宅局安心居住推進課御中

要請書

全国追い出し屋対策会議 代表幹事増田尚
生活弱者の住み続ける権利対策会議 代表田中祥晃

●要請の趣旨

1 新たなセーフティネット住宅を公営住宅を補完するものとして位置付けるとしても、住宅政策において、公的な責任を明らかにして、これを果たす諸施策を盛り込んでください。

2 セーフティネット住宅にあっては家賃債務保証の利用に頼らない制度設計が必要であり、これを利用する場合であっても、家賃債務保証業に対する必要な法規制を実施することを前提としてください。

3 セーフティネット住宅において管理を事業者に委託する場合には、賃貸住宅管理業登録制度の法制化をするなどの事業の適正を確保する措置を講じることによって、賃借人の権利を保障してください。

4 家賃補助については、住宅確保の必要性に応じて、支給される制度としてください。

5 居住支援協議会等による居住支援については、地方公共団体の果たすべき役割を明確にするとともに、居住支援NPOを参加させるなど、実効性ある支援ができるよう体制を整備してください。

●要請の理由

1 当団体らについて

全国追い出し屋対策会議は、賃貸住宅管理業者などの賃貸住宅事業者による賃貸人に対する不当な家賃の取立てや、賃貸住宅の使用を阻害する「追い出し」行為について、賃借人の権利を擁護する活動に取り組んでいる団体です。

生活弱者の住み続ける権利対策会議は、昨年4月に設立され、賃貸住宅事業者による正当事由のない解約申入れ(更新拒絶)など立退をめぐる問題(「ブラック家主」問題)について、賃借人の権利を擁護する活動に取り組んでいる団体です。

2 新たな住宅セーフティネット検討小委員会の「中間とりまとめ」

国土交通大臣の諮問機関である社会資本整備審議会の住宅宅地分科会に設置された「新たな住宅セーフティネット検討小委員会」では、住宅確保要配慮者の居住の安定の確保のため、空き家の活用促進や民間賃貸住宅を活用した新たな仕組みの構築を含めた住宅セーフティネットの強化について検討を進め、7月に、「中間とりまとめ」を策定し、施策の方向性を打ち出しました。

全国的には、約820万戸の空き家があり、うち429万戸が賃貸用住宅です。他方で、高齢者、子育て世帯、障害者、外国人、低額所得者等の住宅確保要配慮者に対して住宅を供給し、居住の安定を確保するために、いわゆる住宅セーフティネット法が制定され、住まいの権利を保障することが重大な政策課題となっています。こうした住宅における需給のミスマッチを解消するために、その原因を探求し、それに対応した措置を講ずることが求められています。

ここ数年においても、ネットカフェ難民、派遣切り、ゼロゼロ物件、追い出し屋、囲い屋、脱法ハウス(違法貸しルーム)、無届介護ハウスなど、住宅確保要配慮者の住まいをめぐって、様々な「貧困ビジネス」が社会問題となってきました。「住まいは商売道具」とばかりに、住居を必要とする窮状に付け込み、自らの利益を最大限に追及する事業者による被害が多発したのは、賃貸住宅をめぐる事業者について何らの法規制がなされなかったことが最大の要因です。これらの事業者に対し必要な規制を行うことにより、居住の権利を保障することが求められています。

新たなセーフティネット住宅の制度を設計する上では、何よりもまず、「住まいは人権」への政策転換を図ることが不可欠です。

3 セーフティネット住宅の位置付け

「中間とりまとめ」では、新たな住宅セーフティネット制度を「公営住宅を補完するもの」と位置付けています。

確かに、日本の賃貸住宅戸数に占める公共部門(公営住宅・公共住宅)の割合は著しく少なく、民間賃貸住宅を活用しなければ、十分な住宅の供給はできません。また、民間賃貸住宅における空き家を活用する必要性も理解できます。しかし、居住の権利の保障を民間事業者に任せてきたからこそ、住宅の確保が困難な者が生み出されてきたのではないでしょうか。

そうであれば、新たな住宅セーフティネット制度を「公営住宅を補完するもの」と位置付けるとしても、公的な責任をどう果たすのかが問われるべきです。

そこで、後述するような制度設計の具体化によって、住宅確保要配慮者に対する住宅の供給における国及び地方公共団体などの公共部門の役割を明らかにする必要があります。

また、民間賃貸住宅を活用しつつ、住宅セーフティネットにおける公営住宅の役割を減殺するべきではありません。中間とりまとめは、公営住宅のほか、借上公営住宅、地域優良賃貸住宅、住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業などの準公的賃貸住宅について、地方公共団体の財政負担や、住宅確保要配慮者の入居に対する民間事業者の不安などを指摘し、今後の供給増が見込めないとしています。

しかし、公営住宅は、住宅セーフティネットの基盤であり、これを「底抜け」にすることは、住宅セーフティネット全体を揺るがすものといわざるを得ません。公営住宅の供給増など住宅セーフティネットの重層化が求められます。

4 セーフティネット住宅における家賃債務保証の利用のあり方と家賃債務保証業者の事業の適正を確保するための施策

中間とりまとめは、セーフティネット住宅のあり方について、住宅確保要配慮者の入居を拒まないことを要件としつつ、賃貸事業者の家賃未収等の懸念に対応するため、家賃債務保証を利用することを提唱しています。

しかしながら、家賃債務保証業については、賃借人の生活の平穏や居住の権利を侵害するような苛烈な取立て・追い出し行為による被害が見られたことから、登録制を義務付け、不当な取立行為を禁止する等の法案が提出されたことからも明らかなとおり、住宅確保配慮者の居住権を脅かす被害が発生していました。被害相談件数は依然として多く、今日もなお、規制すべき必要性は変わりありません。必要最小限の法的規制もないままに、家賃債務保証業者をセーフティネット住宅に組み入れることは、かえって住宅確保要配慮者の居住の安定の確保を妨げることにもなりかねません。

そこで、セーフティネット住宅においては、家賃債務保証業者の利用は抑制的であるべきであり、後述する家賃補助や、公的保証制度の拡充などの代替手段を検討すべきです。また、少なくとも、家賃債務保証業者につき次のような規制をする業法を制定することなしに、セーフティネット住宅に家賃債務保証業者を利用すべきではありません。

① 義務的登録制
② 家賃保証委託契約の実体面での規制(不当条項の規制)
③ 不当な取立行為の禁止

人を威迫し、又は、私生活・業務の平穏を害するような家賃等の取立てを禁止し、これに違反した家賃債務保証業者に対しては、登録取消等の行政処分を行うことができるようにすることはもちろん、刑事罰を科すことも検討すべきです。

具体的には、深夜・早朝の督促禁止(福岡地裁平成21年12月3日判決・消費者法ニュース83号65頁)、勤務先等への連絡の禁止、貼り紙の禁止(大阪地裁平成22年5月28日判決・判時2089号112頁)、第三者に対する弁済要求の禁止など,貸金業法と同様の取立行為の規制を設けることや、鍵を交換するなどして賃借人の使用を阻害したり、賃借人の私物を搬出・処分する行為などを禁止すべきです。

関連して、家賃滞納情報等提供事業(家賃滞納データベース)についても、賃貸事業者の家賃の不払に対する不安を軽減するために導入されて、その結果、入居選別がなされており、住宅確保要配慮者への住宅の確保を困難にし、居住の権利を損なっている状況に鑑み、禁止等の必要な法的規制を導入すべきです。

5 セーフティネット住宅における管理を委託する場合における賃貸住宅管理業者の事業の適正を確保するための施策

中間とりまとめでは、セーフティネット住宅の「管理を事業者に委託する場合には、一定の能力等を備えた適正な事業者による管理を要件とすること」を提唱しています。

賃貸住宅管理業者については、現在、告示による登録制度が実施されていますが、任意の登録制度であり、かつ、賃借人の権利を保障するための施策は不十分です。賃貸住宅管理業者による不当な取立行為や「追い出し」行為、正当事由のない解約申入れなど、賃借人の権利を脅かす被害も少なくありません。

そこで、この際、賃貸住宅管理業者に対する業法(登録の義務付け、不当な取立行為の禁止等の業務規制)を制定することなど、必要な法規制をすることを求めます。

6 家賃補助など

中間とりまとめは、「地域の住宅政策において特に配慮が必要な住宅確保要配慮者が入居するセーフティネット住宅については、財政状況にも留意しつつ、低廉な家賃等とするための持続可能な支援を行うこと」を示しています。セーフティネット住宅において家賃補助等の措置を検討することは評価できますが、他方で、家賃補助の対象となる住宅確保要配慮者について、「特に配慮が必要な」との限定を付した上、「財政状況にも留意」することとしている点は、問題であると考えます。

住宅確保要配慮者とは、「低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者」であり(住宅セーフティネット法1条)、その定義において既に「特に配慮を要する」ことがうたわれています。これに加えて、「特に配慮が必要な」との限定を加えることは、重複するものであって無意味というべきですし、家賃補助の要件として何らかの限定を加えるものであるとすれば、住宅セーフティネットの趣旨を損なうものといわざるを得ません。

また、財政状況にも留意することを強調すれば、その分、住宅確保要配慮者の住宅ニーズが満たされないことになるのであり、本末転倒というべきです。

そこで、家賃補助の制度設計に際しては、住宅確保要配慮者の必要を十分に調査した上で、これに応じた補助がなされることを求めます。

7 居住支援協議会等による居住支援の強化

中間とりまとめが居住支援協議会による居住支援の強化を打ち出したことは歓迎しますが、具体策があまり明らかでありません。
居住支援協議会は、各都道府県には設置されたものの、市町村レベルではあまり多くなく、各市町村でも設置できるよう、国は必要な予算措置を講じるべきです。

また、先進的なとりくみに学び、居住支援協議会のメンバーに居住支援を行っている民間NPOを参加させるなど、実効性のある居住支援ができる体制を整備することが求められます。

草々



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