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住居確保給付金の抜本的拡充を求めるパブコメを提出しました。3月1日まで募集中なので、ご協力を!

3月1日まで、「生活困窮者自立支援法施行規則の一部を改正する省令案」に関するパブリックコメントの募集が行われています。

「生活困窮者自立支援法施行規則の一部を改正する省令案」に関する御意見の募集について

住まいの貧困に取り組むネットワークとして、住居確保給付金の抜本的拡充を求める立場から下記の意見を提出しました。
ぜひ、この意見を参考にしていただいて、各自、パブコメを送っていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。

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「生活困窮者自立支援法施行規則の一部を改正する省令案」に関する意見

 住まいの貧困に取り組むネットワーク(世話人:坂庭国晴、稲葉剛)
   
     
新型コロナウイルス感染(以下、コロナ禍)症感染拡大にともない、住居確保給付金(以下、給付金)の要件緩和・それに伴う利用者の著増は、今次の改正にとって、きわめて重要な前提である。

具体的には、収入減少の場合も利用可能とする要件緩和があり、令和2年度には約13万5千件という前年比約34倍という利用者の著増が見られた(以上、省令案に記載あり)。かつ、非正規労働者や自営業者なども含めた、生活保護よりも若干収入の高いボーダーライン層に相当する利用層に対する住まいの安定という効果も見られる(藤森 2021)。これは「本来の制度目的との整合性やその効果等も踏まえつつ、そのあり方について検討していくことが必要である」という省令案の記述とも符合する。

以上より、給付金の積極的拡大を提案する。
第一に、コロナ禍の下で給付金が拡大され・それが維持されている以上、現時点で、コロナ禍が必ずしも終息していないという中期的事情・背景から、給付金を縮小・抑制するというのは、論理的に一貫していない。縮小・抑制はすべきではない。

第二に、日本には、生活保護の住宅扶助以外に、恒常的な住宅手当が存在しないという事情も含めて、給付金を、恒常的な住宅手当へと発展させていくべきであると考える。なお、貴省の「生活困窮者自立支援のあり方に関する論点整理」(2022年4月)では、「住居確保給付金については、コロナ禍にあって一定の役割をはたしてきたが、住まいを喪失するおそれのある人の多さ(裾野の広さ)が顕在化した以上、住宅手当といった家賃補助的な施策を含め、普遍的な社会保障施策として検討する必要があるのではないか。」という論点が示されていたのである。

以下、そのような主旨から、3点、コメントを行う。

1.求職活動要件の廃止

省令案2ページ(2)求職活動要件について:2つめの項目
省令案:「また、離職・廃業と同程度まで収入が減少したことにより住居確保給付金を受給する者について、当該者が給与以外の業務上の収入を得る機会の増加を図る取組を行うことが当該者の自立の促進に資すると都道府県等が認めるときは、申請日の属する月から3ヶ月間(規則第12条第1項の規定により、支給期間を延長する場合であって、引き続き当該取組を行うことが当該者の自立の促進に資すると都道府県等が認めるときは、6ヶ月間)に限り、当該取組を行うことをもって、求職活動要件である公共職業安定所等への求職申込みに代えることができることとする。」

変更案:「また、離職・廃業と同程度まで収入が減少したことにより住居確保給付金を受給する者について、制度の対象となる収入が、制度の対象外の増収とならない限りは、求職活動を要件とせず、再支給を可能とするものとする。」

変更理由:収入が減少した利用者の場合、仕事自体はあるのだから、必ずしも転職をすることが望ましいとは限らない。住まいは生活の基盤であるのだから、求職・転職活動によって(求職活動と結びつけられている給付金が、利用期間の満了をもって利用できないことになるとすると)住まいの安定が毀損されることは望ましくない。したがって、求職活動要件を撤廃すべきである。また、収入を得る機会は、最低賃金の引上げなど、雇用保障の充実によって行われるべきである。というのも、社会政策研究にあっては、住宅手当は、所得保障のみならず、居住水準保障を目的とするものであり(Kemp 2007)、独立した目的を有するのであって、言い換えれば、求職政策に従属すべきものではないからである。

2.再支給の条件の拡大

省令案2ページ(3)再支給について、1つめの項目
省令案:「ただし、134の場合においては、支給終了後1年の間は同給付金の支給を行わないこととする。」

変更案:「上記1~4のいずれの場合においても、支給終了後の再支給を妨げない。」

変更理由:上記と同じく、住まいは生活の基盤であり、住宅手当が所得保障のみならず居住水準保障を目的とする以上、再支給を行わない合理的理由は存在しない。

3.収入要件と支給額の改善

省令案の「支給要件等の見直し」で最も必要な事項は、「収入要件」と「支給額」の見直し、改善である。「収入要件」は、東京特別区の場合、単身世帯13.8万円、2人世帯19.4万円であり、公営住宅入居収入とほぼ同じである。これ以上の収入の場合、給付金の申請もできない状況が続いている。この「収入要件」の引き上げが必要である。
「支給額」も「住宅扶助基準額を上限」とし、同特別区の場合で単身53,700円、2人世帯64,000円であり、この額では家賃支払ができない世帯が続出する現状にある。支給額の引き上げが必要である。

結論
既に見てきたように、コロナ禍における給付金の拡充は、コロナ禍によってもたらされたものであると同時に、その利用者の著増・利用実態は、恒常的な住宅手当の必要性を示しているようにも思われる。省令案には必ずしも出てきていないが、コロナ禍前から低収入であった世帯は、コロナ禍以後も使えないなどの問題点も指摘されている(葛西 2021)。以上の問題点を、改めて、住まいは生活の基盤であり、住宅手当が所得保障および居住水準保障の目的を果たすものであることを認め、その実現に向けて、給付金の拡充に着手することが望ましい。

藤森克彦,2021,「コロナ禍における居住支援のあり方」全国居住支援法人協議会総会記念シンポジウム.
https://bit.ly/3Etj5Vx

Peter A. Kemp ed.,2007,Housing allowances in comparative perspective ,Policy Press.

葛西リサ,2021,「シングルマザーの居住貧困』オンライン記者会見.
https://note.com/single_mama_pj/n/n314829c3dbe6


 上記の通り、意見を提出いたします。

2023年2月24日










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