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【10.19住まい分科会】細谷紫朗さん(東京借地借家人組合連合会)

細谷紫朗さん(東京借地借家人組合連合会)
 「借地借家法」は居住の安定を図るのが目的として大正10年に作られた法律。昭和16年に正当事由制度が導入され、戦争中戦後に住宅事情が悪化するなかで、居住の安定を保護するために制定されたもの。居住の安定を保護するべき借地借家法が改悪され、「定期借家制度」が2000年3月1日から導入され、貧困ビジネスに活用されているという事実に大変驚きをもっている。
 定期借家制度では、契約期間が満了すると無条件に借家の明け渡しをしなければならないという借家人にとっては大変過酷な借家制度だ。大家は1年以上の契約であれば、1年前から半年前までの間に明渡しを通告すれば、なんの理由がなくても借家人は無条件借家を出なければならない。
 定期借家制度は、2000年の導入時、不動産業界の非常に大きな圧力で、政官財と一部マスコミも含めて定期借家制度はいい制度ではないかと大宣伝して導入された経緯がある。たとえば、定期借家制度になれば、「良質な借家の供給が増える」「家賃が安くなる」「借家人の利益を増進させる」「借家市場の活性化」「住宅福祉の促進」などと宣伝された。
 98年、借地借家法の改正が法務委員会で審議されていたが1年間まったく審議されず、「良質な賃貸住宅等の供給促進に関する特別措置法」という長いわけのわからない名前で建設委員会にかけられた。
 借地借家法の改正を法務委員会ではなく建設委員会にかけるという、国会のルールを無視したやり方で制定されてしまった。その当時、不動産業界は約2億3千万円を政治家に献金したと聞いている。そのように無理やり導入された制度である。
 この特別措置法には、「良質な賃貸住宅等の供給促進」という名目があり、公共賃貸住宅や良質な賃貸住宅の供給、それから定期借家制度を導入させるという2つの目的がある。しかし、「良質な賃貸住宅の供給」はすべて努力義務とされている。当時も相当批判されていたが、結局、努力義務しか書かれていない。
 実際、制度導入から8年経つが、「良質な賃貸住宅の供給」が促進されたのかどうかが問われる。総務省の平成15年の調査でファミリー向けの賃貸住宅ストックが現在でも168万戸不足していることが明らかになった。民営借家というのは持家の平均の床面積の3分の1しかない。欧米では7割くらい。これからわかるように日本の借家は、非常に狭い劣悪な借家事情は何ら改善されていない。
 それに、公共住宅を促進させるというが、この8年間で東京都で都営住宅の新規建設はゼロ。2006年の5月、都営住宅の入居募集は57.4倍に増えている。6年間に都営住宅の応募倍率は4倍も急上昇している。住宅事情はさらに悪化しているのは明らかだ。
 公営住宅だけなく、公団住宅(機構住宅)も削減、売却されようとしている。公社住宅も民営化を進めている。公共賃貸住宅の供給はどんどん後退しているのが現実。法律にあるように努力するどころか、むしろ悪くしているのがこれまでのやり方。
 そのような意味で、定期借家制度を導入した「良質な賃貸住宅等の供給促進に関する特別措置法」といのはまったくインチキな法律でしかない。
 定期借家契約が実際に普及しているのか、国交省が2007年3月に調査したところ、定期借家制度の普及率はわずか5%。4年前に調査したところ4.7%だった。この3年間で0.3%しか定期借家制度は普及していない。なぜ普及しないのかを事業者に調査したところ、賃借人にとって魅力がなく空き家になる可能性があるというのが45%、普通借家契約で特段の不都合はないというのが44%、審査が厳格であれば普通借家契約でトラブルを回避できるというのが22.8%、などの理由を挙げている。不動産屋も定期借家制度に魅力を感じていない。
 特別措置法の4条には施行後4年後に見直しをするという条項があるが、2004年には見直しをしなければいけない規定になっているが見直しもできない状況。定期借家制度はまったく普及されていない。借家人からも不動産業者からも家主からも見放されている制度だ。
 しかし、この定期借家制度をもっと普及させようという考えが一方である。不動産業界は定期借家制度が普及しない原因はいまの定期借家制度に問題があるんだとしている。2000年3月以前に普通借家契約をした場合、定期借家契約に切り替えることはできないが、それを可能にしようという動きがある。たとえば、契約の更新の際に、大家から少し家賃を下げるから定期借家契約に切り替えましょうかといわれ、それに応じてしまえば、切り替えができる制度にすれば、もっと定期借家制度が促進されるとしている。言い方をかえれば、借家人の追い出しを促進させるために定期借家制度を普及させよう、ということ。
 たとえば、「定期借家推進協議会」はひどいことを言っていて、正当事由制度(借家の明け渡しに正当な理由を求める制度で、貸主の都合だけで明け渡しはできない)を廃止し、定期借家制度一本にすべきと主張している。
 ゼロゼロ物件に象徴されるように、定期借家制度は、本来の目的である良質な賃貸住宅の供給とは無縁で、借家人を追い出し、貧困ビジネスを助長する制度である。こんな制度は、廃止させなければならないという世論を作りあげ、借地借家法の改悪を阻止するために、みなさんと一緒に運動していきたい。
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