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レオパレスの入会費、年会費などを否定した名古屋簡裁判決を紹介します

NW世話人の一人、藤本です。

名古屋在住のレオパレスの部屋に入居していた方から、未払い家賃を支払うよう提訴してきたレオパレスをなんと返り討ちにしたという画期的判決を教えていただいたので、ここでご紹介させていただきます。
名古屋簡裁平成21年10月27日判決・平成20年(ハ)6387号です。
ご本人から判決文を公開してもよいと承諾を得たので、UPしました。
ここからみれます。

簡単な経緯は以下になります。
賃借人であるAさんは、05年1月からレオパレスの物件に住んでいましたが、当時の契約は「部屋利用契約」という賃貸借契約ではない契約だったということです。さらに、メンテナンスの悪さや居住環境の悪さが目に余り、レオパレスに修繕義務を履行するよう求めたところ、レオパレスは過失をいったんは認め、家賃の請求を停止するとしたということです。しかし、その後、一方的に同意を覆し、停止した期間分も含めて家賃請求を行ってきたため、さらなる紛争に至り、レオパレスから明け渡しの請求をうけ、その経緯の中で、Aさんは心理的負担も重なり、失業し家賃が払えない状況に陥ってしまいました。08年7月に提訴され、その後別の物件が運良く見つかり退去したわけですが、退去までの未払い賃料は約8ヶ月に渡りました。提訴当時は明渡し訴訟でしたが、途中でAさんが他の物件に引っ越したことで、未払い賃料の請求事件になっています。原告は代理人に法律家を立てず、被告も本人訴訟で争われた事件です。

裁判は、原告の未払い賃料請求権とAさんの返還請求権や慰謝料との相殺が認められるかどうかが争われ、具体的な争点としては以下になります。

(1)共益費、ブロードバンド使用料、環境維持費について契約は成立しているか。
(2)基本清掃料について契約は成立しているか。
(3)入会費、年会費の趣旨について。返還請求できるか。
(4)ベッドの破損や水道の故障の損害賠償請求権について。
(5)レオパレスの使用当初からの部屋について


結論から言うと、(1)~(5)のすべてで被告側の主張が認められています。
順に見ていきましょう。

(1)共益費、ブロードバンド使用料、環境維持費について

判決文で書かれている裁判所の判断を引用すると(P.6~7)、「契約締結時に、原告側が被告に、利用料の内訳について説明した事実は、本件全証拠によっても認められない。」「原告は契約書も提出しないし、重要事項説明書に基づく説明をしたことについての主張立証もしない。他方、本件訴訟が提起され、訴状が送達されて初めて利用料の内訳を知ったと被告本人は証言するが、この証言は信用できる」として、「契約時ないし入居時に、利用料の内訳について、契約書に明記され、あるいは原告から被告に説明があったとは認められない。」としています。そのうえで、「共益費、ブロードバンド使用料、環境維持費については契約自体成立していない」として、費用の請求(月額8170円の7ヶ月分と日割り)自体を認めていません。また、P.10ではこれまでに支払った金銭の返還請求権も認容し、実に38カ月分、31万円余りもの請求を相殺として認めています。

(2)基本清掃料について契約は成立しているか。

これも(1)と同様に原告が立証責任を果たさなかったことにより、契約が成立していないという被告の主張が全面的に認められ、基本清掃料29920円の請求が棄却されています(P.7)。

(3)入会費、年会費の趣旨について。返還請求できるか。

再度判決文を引用すると(P.8~10)、「賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とする契約であり、賃借人が賃料以外の金員の支払を負担することは賃貸借契約の基本的内容には含まれない。」としたうえで、「入会金は、礼金としての性質を有すると認められる」としています。
また、「年会費は、(中略)更新料としての実質を備えていると認められる」としています。
その上で、「原告が敷金、礼金なしとの広告宣伝を行っているのは公知の事実であるにもかかわらず、賃料1ヶ月分相当分を、入会金として納めさせ、敷金と違って返還するとの規定もないのであるから、本件入会金は消費者である被告にとって大きな負担となる」と認め、原告により「その旨が具体的かつ明確に説明され、賃借人がその内容を認識した上で合意されることが必要であり、そうでない以上、民法1条2項に規定する基本原則(信義誠実の原則)に反して賃借人の利益を一方的に害するものというべき」とし、具体的かつ明確に説明がされていない事実を認めて、入会金(46370円)、年会費(3年分63000円)をともに消費者契約法10条で無効としています。

入会費を礼金、年会費を更新料の趣旨であると解釈した上で、消費者契約法10条で無効と判断している点については、レオパレスの他契約はもちろんのこと、レオパレスに限らず他事例へと波及する可能性もあります。更新料は大阪高裁で無効とした判決(平成21年8月27日判決)がありましたが、礼金を消費者契約法10条で無効とした判例はこれまでにないはずであり、そういった意味でも大きな意味をもつのではないでしょうか。

(4)ベッドの破損や水道の故障の損害賠償請求権について。

Aさんは備え付けのベッドが壊れたことによって負傷しています。その分の損害賠償(37100円)と、水道が故障して水が出なくなったことにより、何度も修理を求めたが原告は対応せず、5ヶ月近くも不便を強いられた事実について損害賠償(55000円)が認められています。
さらには、破損したベッドの交換についても慰謝料を発生させるほどではないとしながらも、以下のようにかなりきつい調子で原告を批判しています。
「原告の対応には、迅速性に欠ける点があるし、ベッドについては、破損が2回続いたにもかかわらず、リースにより、3回目も同じメーカーの同種のベッドを入れた事実が認められ、(中略)検討もせず、同じメーカーの同種のベッドを入れたことは、明らかに原告の過失である」(P.11)。
このように、壊れたベッドと同じメーカーのものをなぜか執拗に入れ続けるレオパレスの対応を、不法行為とは認めないとしながらもきつく戒めているわけです。これは入居者の生活上の不都合に誠意をもって対応しないレオパレスの体質を批判しているともいえるのではないでしょうか。

(5)レオパレスの使用当初からの部屋について

これもインパクトのある内容になっています。なぜなら、レオパレスが提供した使用当初の部屋の状態が争点になっているからです。
裁判所は以下のように事実認定しています。
「隣室との間の壁が薄く、隣室の通常の会話の話し声が聞こえるほどだった、当初エアコンの(暖房機能の)効きが悪く、非常に寒い思いをした、その後、翌年の夏ごろ、エアコンは交換されたが、これはクレーム処理によるものではなく、全室一斉に交換されたものであった。光ブロードバンド回線はあったが、速度が遅く、よく故障した。電気コンロが旧型で沸騰までに非常に長くかかった。トイレのタンクと壁とを繋ぐ水道管に水漏れがあった(ユニットバスの中なので特に対策はしていない。)。入居時において、タバコのシミがあるなど、前居住者からの原状回復には不十分な点があった。」(P.12)
この事実によって、精神的苦痛を受けたと認め、慰謝料5万円を認定しています。

おそらく、レオパレスに入居されている方の多くは、こんなの自分の部屋でもそうだ、と思われるのではないでしょうか。よくあることだから仕方がない、入居当初からそのような状態なのだから、むしろこれが「普通の部屋」だ、と思っていらっしゃる方も多いでしょう。レオパレスに言ってもきちんと対応しないし、そのうちに諦めてそんなものだと妥協することもよくあることです。
しかし、この判決は、そのような諦観や妥協を覆し、レオパレスが入居時に提供する部屋自体をまともな部屋ではないと否定するものです。つまり、この判決の波及効果はレオパレスのすべての部屋に及ぶ可能性があり、大きな意味をもっているといえるのです。

以上のようにAさんは被告とされていながら、結局(1)~(5)のすべてで主張が認められ、未払い賃料の相殺はもちろんのこと、原告の請求を25万円以上も上回る合計65万以上の請求権が認容されました。

相手側がなぜまともな主張立証をしなかったのかは不明ですが、Aさんの入居時の契約が「部屋利用契約」という賃貸借契約ではない契約であったことから、その契約が脱法を意図したものであると主張されるのを恐れたのかもしれません。

なお原告は控訴した模様で、名古屋地裁に場を移して争われる予定です。
今度は相手がどのような主張をしてくるのか、今後も訴訟の成り行きを注視したいと思います。

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[C133] 承認待ちコメント

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[C107] この一件どうなったのでしょうか

今日は。この一件私の方の情報では被告が折れて和解になった(レオパレスの口頭での主張、判決文は無し)となっています。証拠を提出されてないので事実なのか分かりません。又部屋利用契約を賃貸借契約ではないとはっきり主張、契約の自由だからかまわないとしています。契約の自由とはどのような契約でも契約してしまえば有効なのでしょうか? 和解になっていた場合は下位裁判所の判決は無効となるのでしょうか?

[C101] Re: 法律がわからないので


まずはメールでご連絡いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

[C100] 法律がわからないので

ご返答ありがとうございます。争点は年会費です。裁判の当事者が口頭弁論で知り得た情報を口外していいものか分からないのでこれ以上書き込んでいいのか分かりません。特に制限が無いようでしたら書き込みたいですけどね
  • 2010-02-18 16:05
  • 茂平
  • URL
  • 編集

[C97]

書き込みありがとうございます。

裁判お疲れ様です。
詳細な争点や判決文など、今後ご連絡いただければ幸いです。
どうぞがんばってください。

  • 2010-01-25 03:24
  • sino
  • URL
  • 編集

[C96] 私も現在年会費支払いで裁判を行っています

初めまして。私も年会費支払いを拒否していた所、昨年9月末にレオパレス21社から支払い督促が送られ、異議申し立てを行い裁判になっております。私の住んでいる県では、初めに納得して契約をしたと見る法律相談員や弁護士の方が多く、また裁判官の方もそのような傾向に見受けられます。その為どうやって戦っていこうか途方にくれそうになった時にこちらの判例を見させていただきました。この判例を軸に戦っていこうと思っています。判例を記事にしていただきありがとうございます
  • 2010-01-21 12:44
  • 茂平
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