シンエイは借地借家法違反の契約書使用をやめろ!
シンエイに入居しているAさんの事例です。
Aさんは、保証人不要で敷金礼金の必要ない(いわゆるゼロゼロ物件)条件で入居しましたが、入居時に保証人をつけることができないことを理由として、趣旨が不明な入館料39000円を徴収された上、「一時使用貸室賃貸借契約書(保証人無)」という契約を結ばされていました。
保証人をつけることのできる場合なら契約期間が2年間の普通借家契約であるところを、この「一時使用貸室賃貸借契約書(保証人無)」は「短期一時使用契約のため、居住権は発生しない。」と記載され、契約期間が、1ヶ月となっています。
つまり、契約期間は、08年1月下旬から08年2月末までの実質1ヶ月間で、その後も09年4月まで1ヶ月ごとの契約を14回繰り返し(08年12月は年末だからという理由で2ヶ月の契約)、そのたびに店舗(立川)へ家賃を持参し、書面での契約を結ばされています。滞納することなく支払っていると、2009年5月には3ヶ月間の契約書を交付され、その後、2009年8月には6ヶ月間の契約書を交付されています。
物件はアパートで、客観的居住条件はなんら他の賃貸物件と変わりはありません。
保証人がいない弱みにつけこみ、通常とは異なる脱法した契約を結ばせることで、当初は短期間の契約を繰り返させ、滞納がないと見るや3か月→6カ月と徐々に契約期間を伸ばしていると見られます。
契約書をUPしておきます。
入居時の契約書です。契約期間が1ヶ月であること、入館料を徴収されていることがわかります。第1条に「一時使用のための賃貸借契約を締結した。」とあります。

09年4月の契約書です。この時点までに14回に渡って、契約書を繰り返し交付されています。第1条2項には「短期一時使用契約のため、居住権は発生しない。」と書かれています。第7条には入館料について、「返還金は生じないものとする」とのみ書かれています。

09年5月の契約書です。3ヶ月間の契約になっています。

09年8月の契約書です。今度は6ヶ月の契約になっています。

この契約書について東京市民法律事務所の酒井恵介弁護士から法的な問題点の解説をいただいています。
以下になります。
「一時使用目的」を謳った賃貸借契約書の問題点
2009年12月18日
弁護士 酒井恵介
株式会社シンエイは,「一時使用貸室賃借契約書」ないし「短期一時使用契約書」などと題する契約書(「本件賃貸契約書」という。)を使用し,賃借人との間で,アパートについて,1か月,3か月などの短期間の契約期間での賃貸借契約を締結し,契約期間満了時に再度,「一時使用貸室賃借契約書」ないし「短期一時使用契約書」などと題する契約書を使用して短期間の賃貸借契約を締結させるという営業を行っている。
しかし,このような営業方法は,借地借家法を脱法し,賃借人の地位を極めて不安定にするものであって,不適切である。
第1 本件賃貸借契約書が借地借家法の脱法を意図したものであること
1 契約条項
株式会社シンエイが使用している「一時使用貸室賃借契約書」ないし「短期一時使用契約書」には,下記のような条項がある。
記
第1条 (主旨)
貸主(以下,甲)と借主(以下,乙)は,本件物件について,一時使用のため賃貸借契約を締結した。
第2条 (使用目的)
短期一時使用契約のため,居住権は発生しない。
2 「一時使用目的」の建物賃貸借とは
借地借家法(以下,「法」という。)40条は,「この章の規定は,一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には,適用しない」としている。「この章」とは法「第3章 借家」をさすものである。すなわち,「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」には,いわゆる「法定更新」,更新拒絶の期間制限(法26条),解約の申入れの期間制限(法27条),更新拒絶や解約申入れに対する「正当事由」による制限(法28条),1年未満の有期契約の制限(法29条),強行規定条項(法30条)などの賃借人保護を目的とした規定が適用されない。
したがって,「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」にあたるか否かは賃借人の利益にとって極めて重要な意義を有する。
「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」とは,「賃貸借契約締結の動機,目的建物の種類,構造,賃借人の貸借目的および契約後の使用状況,賃料その他の対価の多寡,期間その他の契約条件等の諸要素を総合的に勘案し,長期継続が予期される通常の借家契約をなしたものではないと認めるに足りる合理的な事情が客観的に認定される場合を指すもの」である(東京地判昭54.9.18判時955-99)。したがって,単に,「一時使用」という文言が契約書に記載されているというものでは足りない(東京地判昭33.2.21,判時151-26)。
「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」の例としては,選挙事務所,簡易宿泊所などが挙げられる。
3 本件賃貸契約書を利用した契約が「一時使用目的」の建物賃貸借にあたらないこと
上記のとおり,単に,賃貸借契約書に「一時使用目的」であることを謳ったからといって,当該契約が「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」とはいえない。
また,本件においては,通常の居住用アパートの賃貸借であり,契約期間を1か月や3か月などの限定することを賃借人側は希望しておらず,実際にも,何度も契約期間の更新が繰り返されているのであるから,「長期継続が予期される通常の借家契約をなしたものではないと認めるに足りる合理的な事情が客観的に認定される場合」とは到底言えない。
したがって,本件契約書を利用してシンエイが行っている契約は「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」にはあたらない。
4 本件賃貸契約書を利用した契約にも借地借家法の適用があること
本件契約書を利用してシンエイが行っている契約は「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」にはあたらないことから,法「3章 借家」にある規定の適用を受ける。
すなわち,契約期間については法29条(「期間を1年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めのない建物の賃貸借とみなす。」)の適用を受け,契約書にある1か月,3か月などの契約期間の定めは無効となり,「期間の定めのない」建物賃貸借契約となる。
また,賃貸人が賃貸借の解約をする場合には,解約の申入れから6か月を経過する必要があり(法27条),さらに,かかる解約の申入れは「正当の事由」があると認められる場合でなければできない(法28条)。
第2 その他の問題点
1 「追い出し条項」について
本件契約書においては,「本契約が解約されたとき及び契約期間満了のときは乙は直ちに本件物件を退去しなければならない。その際乙は甲に対して移転料,立退料,損害賠償その他何等かの名義を以てするを問わず,本契約に基づく以外の請求をしないものとする。乙がこれを怠り明け渡さなかったときは,甲は直ちに明渡しを執行する事ができる。その際,甲は玄関ドアの鍵交換をし,本件物件内の家財一式を処分又は任意の場所に保管する。売却処分の上責務に充当するも異議なきこと。明渡しに要した費用はすべて乙の負担とする。」(10条2項)とされている。
かかる条項においては,①賃貸人について理由を問わず一切の損害賠償責任を免除すること,②契約終了時において,賃貸人が法的手続によらずに玄関ドアの鍵交換をすることを容認すること,③賃貸人が法的手続によらずに賃貸物件内の賃借人所有の動産を撤去・処分ができることなどが定められている。
しかし,法的手続によらずに賃借人の意思に反して賃貸物件の鍵交換,物件内の賃借人所有の動産を撤去・処分することは違法な自力救済であり,民事上不法行為にあたる(民法709条)。
①については,これらの行為によって賃借人が被る損害を賠償する責任までも免除する趣旨であれば消費者契約法8条1項1号ないし3号に違反し無効といわざるを得ない。また,②,③については,賃借人の権利を著しく制限するものであって,公序良俗に違反し(民法90条),又は,消費者契約法10条に違反し無効である。
2 「入館料」について
シンエイは,契約時において,賃借人から「入館料」という名目で数万円の徴収をしている。本件契約書においては,「入館料」については,「返還料は生じないものとする。」(7条)と定めるのみである。
賃貸借契約においては,賃借人が賃料以外の金銭の支払義務を負担することは契約の基本的内容ではない。かかる「入館料」は,賃借人から賃料以外の金銭を徴収するものであるにもかかわらず,その趣旨は不明であり,対価性のないものである。
したがって,かかる条項は「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,・・・消費者の義務を加重する消費者契約の条項」であり,「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であるので,消費者契約法10条に違反し無効である。
以上
このような弱みにつけこんだ違法な契約書を用いることは許しがたく、監督行政である東京都は速やかに指導是正をするべきであることは言うまでもなく、シンエイならびにシンエイエステートは即刻使用を中止し、Aさんに謝罪するべきではないでしょうか。
Aさんは、保証人不要で敷金礼金の必要ない(いわゆるゼロゼロ物件)条件で入居しましたが、入居時に保証人をつけることができないことを理由として、趣旨が不明な入館料39000円を徴収された上、「一時使用貸室賃貸借契約書(保証人無)」という契約を結ばされていました。
保証人をつけることのできる場合なら契約期間が2年間の普通借家契約であるところを、この「一時使用貸室賃貸借契約書(保証人無)」は「短期一時使用契約のため、居住権は発生しない。」と記載され、契約期間が、1ヶ月となっています。
つまり、契約期間は、08年1月下旬から08年2月末までの実質1ヶ月間で、その後も09年4月まで1ヶ月ごとの契約を14回繰り返し(08年12月は年末だからという理由で2ヶ月の契約)、そのたびに店舗(立川)へ家賃を持参し、書面での契約を結ばされています。滞納することなく支払っていると、2009年5月には3ヶ月間の契約書を交付され、その後、2009年8月には6ヶ月間の契約書を交付されています。
物件はアパートで、客観的居住条件はなんら他の賃貸物件と変わりはありません。
保証人がいない弱みにつけこみ、通常とは異なる脱法した契約を結ばせることで、当初は短期間の契約を繰り返させ、滞納がないと見るや3か月→6カ月と徐々に契約期間を伸ばしていると見られます。
契約書をUPしておきます。
入居時の契約書です。契約期間が1ヶ月であること、入館料を徴収されていることがわかります。第1条に「一時使用のための賃貸借契約を締結した。」とあります。

09年4月の契約書です。この時点までに14回に渡って、契約書を繰り返し交付されています。第1条2項には「短期一時使用契約のため、居住権は発生しない。」と書かれています。第7条には入館料について、「返還金は生じないものとする」とのみ書かれています。

09年5月の契約書です。3ヶ月間の契約になっています。

09年8月の契約書です。今度は6ヶ月の契約になっています。

この契約書について東京市民法律事務所の酒井恵介弁護士から法的な問題点の解説をいただいています。
以下になります。
「一時使用目的」を謳った賃貸借契約書の問題点
2009年12月18日
弁護士 酒井恵介
株式会社シンエイは,「一時使用貸室賃借契約書」ないし「短期一時使用契約書」などと題する契約書(「本件賃貸契約書」という。)を使用し,賃借人との間で,アパートについて,1か月,3か月などの短期間の契約期間での賃貸借契約を締結し,契約期間満了時に再度,「一時使用貸室賃借契約書」ないし「短期一時使用契約書」などと題する契約書を使用して短期間の賃貸借契約を締結させるという営業を行っている。
しかし,このような営業方法は,借地借家法を脱法し,賃借人の地位を極めて不安定にするものであって,不適切である。
第1 本件賃貸借契約書が借地借家法の脱法を意図したものであること
1 契約条項
株式会社シンエイが使用している「一時使用貸室賃借契約書」ないし「短期一時使用契約書」には,下記のような条項がある。
記
第1条 (主旨)
貸主(以下,甲)と借主(以下,乙)は,本件物件について,一時使用のため賃貸借契約を締結した。
第2条 (使用目的)
短期一時使用契約のため,居住権は発生しない。
2 「一時使用目的」の建物賃貸借とは
借地借家法(以下,「法」という。)40条は,「この章の規定は,一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には,適用しない」としている。「この章」とは法「第3章 借家」をさすものである。すなわち,「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」には,いわゆる「法定更新」,更新拒絶の期間制限(法26条),解約の申入れの期間制限(法27条),更新拒絶や解約申入れに対する「正当事由」による制限(法28条),1年未満の有期契約の制限(法29条),強行規定条項(法30条)などの賃借人保護を目的とした規定が適用されない。
したがって,「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」にあたるか否かは賃借人の利益にとって極めて重要な意義を有する。
「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」とは,「賃貸借契約締結の動機,目的建物の種類,構造,賃借人の貸借目的および契約後の使用状況,賃料その他の対価の多寡,期間その他の契約条件等の諸要素を総合的に勘案し,長期継続が予期される通常の借家契約をなしたものではないと認めるに足りる合理的な事情が客観的に認定される場合を指すもの」である(東京地判昭54.9.18判時955-99)。したがって,単に,「一時使用」という文言が契約書に記載されているというものでは足りない(東京地判昭33.2.21,判時151-26)。
「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」の例としては,選挙事務所,簡易宿泊所などが挙げられる。
3 本件賃貸契約書を利用した契約が「一時使用目的」の建物賃貸借にあたらないこと
上記のとおり,単に,賃貸借契約書に「一時使用目的」であることを謳ったからといって,当該契約が「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」とはいえない。
また,本件においては,通常の居住用アパートの賃貸借であり,契約期間を1か月や3か月などの限定することを賃借人側は希望しておらず,実際にも,何度も契約期間の更新が繰り返されているのであるから,「長期継続が予期される通常の借家契約をなしたものではないと認めるに足りる合理的な事情が客観的に認定される場合」とは到底言えない。
したがって,本件契約書を利用してシンエイが行っている契約は「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」にはあたらない。
4 本件賃貸契約書を利用した契約にも借地借家法の適用があること
本件契約書を利用してシンエイが行っている契約は「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」にはあたらないことから,法「3章 借家」にある規定の適用を受ける。
すなわち,契約期間については法29条(「期間を1年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めのない建物の賃貸借とみなす。」)の適用を受け,契約書にある1か月,3か月などの契約期間の定めは無効となり,「期間の定めのない」建物賃貸借契約となる。
また,賃貸人が賃貸借の解約をする場合には,解約の申入れから6か月を経過する必要があり(法27条),さらに,かかる解約の申入れは「正当の事由」があると認められる場合でなければできない(法28条)。
第2 その他の問題点
1 「追い出し条項」について
本件契約書においては,「本契約が解約されたとき及び契約期間満了のときは乙は直ちに本件物件を退去しなければならない。その際乙は甲に対して移転料,立退料,損害賠償その他何等かの名義を以てするを問わず,本契約に基づく以外の請求をしないものとする。乙がこれを怠り明け渡さなかったときは,甲は直ちに明渡しを執行する事ができる。その際,甲は玄関ドアの鍵交換をし,本件物件内の家財一式を処分又は任意の場所に保管する。売却処分の上責務に充当するも異議なきこと。明渡しに要した費用はすべて乙の負担とする。」(10条2項)とされている。
かかる条項においては,①賃貸人について理由を問わず一切の損害賠償責任を免除すること,②契約終了時において,賃貸人が法的手続によらずに玄関ドアの鍵交換をすることを容認すること,③賃貸人が法的手続によらずに賃貸物件内の賃借人所有の動産を撤去・処分ができることなどが定められている。
しかし,法的手続によらずに賃借人の意思に反して賃貸物件の鍵交換,物件内の賃借人所有の動産を撤去・処分することは違法な自力救済であり,民事上不法行為にあたる(民法709条)。
①については,これらの行為によって賃借人が被る損害を賠償する責任までも免除する趣旨であれば消費者契約法8条1項1号ないし3号に違反し無効といわざるを得ない。また,②,③については,賃借人の権利を著しく制限するものであって,公序良俗に違反し(民法90条),又は,消費者契約法10条に違反し無効である。
2 「入館料」について
シンエイは,契約時において,賃借人から「入館料」という名目で数万円の徴収をしている。本件契約書においては,「入館料」については,「返還料は生じないものとする。」(7条)と定めるのみである。
賃貸借契約においては,賃借人が賃料以外の金銭の支払義務を負担することは契約の基本的内容ではない。かかる「入館料」は,賃借人から賃料以外の金銭を徴収するものであるにもかかわらず,その趣旨は不明であり,対価性のないものである。
したがって,かかる条項は「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,・・・消費者の義務を加重する消費者契約の条項」であり,「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であるので,消費者契約法10条に違反し無効である。
以上
このような弱みにつけこんだ違法な契約書を用いることは許しがたく、監督行政である東京都は速やかに指導是正をするべきであることは言うまでもなく、シンエイならびにシンエイエステートは即刻使用を中止し、Aさんに謝罪するべきではないでしょうか。
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